加齢とともに歯茎(はぐき)が下がってきますが、これは、加齢とともに細胞の増殖する力が低下するためで、誰にでも起こることです。

しかし、加齢による口腔内(こうくうない)変化は歯茎の低下だけにとどまらず、歯根(歯の根元)が露出してしまい、骨粗しょう症によって歯を支える土台である歯茎が痩せてしまい、歯周病などの『口腔疾患』になりやすくなります。

歯周病とは「歯肉炎」と「歯周炎」の総称ですが、歯周病は、「歯周病を引き起こす細菌」によって起こる、立派な「(慢性)細菌感染症」です。

口の中に存在する細菌の数は700種類以上確認されています。これら常在菌のうち、歯周病の原因と関連が深い細菌3種類は『RED COMPLEX』と呼ばれ危険視されており、普段「歯周病菌」というと、この3種類もしくは、その中でも最も危険視されているP. gingivalisという細菌を指しています。

歯周病というと、口臭の問題も起こりますが、この悪臭はP. gingivalisが出す毒素によるもので、この毒素は歯や歯茎などの硬い組織を溶かします。

さて、歯周病、正確には歯周炎になると歯周ポケットといって、歯と歯肉の間に隙間ができます。

歯はエナメル質という硬い組織に守られていますが、歯肉は柔らかい組織です。そのため、もともと歯と歯肉の接着部分は弱いのです。もともと弱い結合部分であるため、歯肉には毛細血管が張り巡らされ、常に外的から守るために免疫細胞が巡り、漏出液(血管から染み出る液体)によって、細菌を洗い流しています。

しかし、歯周病菌による慢性的な強い炎症、P. gingivalisの毒素によって歯や歯茎などの硬い組織が溶けるなどや、加齢による歯肉の退化(歯茎が下がってくる状態)によって、もともと弱い歯と歯茎の接着部分が剥がれていくと、その隙間が歯周ポケットとなり、細菌の侵入を許してしまうことになってしまいます。

歯周病(歯肉炎・歯周炎)になると、歯茎が腫れ、出血しやすくなります。歯周病菌はその傷から血管内に侵入し、血管内を巡り「日常的菌血症」となり、全身に炎症を引き起こします。

虫歯(う歯)を放置は、細菌性心内膜炎の原因になることはとても有名な話です。これは、口腔内細菌が血流を巡り、心臓に達し、心臓内で疣贅(ゆうぜい)という細菌の塊をつくることによるものです。

歯周病は、糖尿病、肥満、関節リウマチ、アルツハイマー型認知症、動脈硬化、骨粗しょう症、非アルコール性肝炎や早産・低体重児出産と関連が深いことも分かっています。

「歯周病」というと、口が臭いとか、歯を失うなど、『口のトラブル』として軽視されがちですが、歯周病の放置は全身の健康を損ねる大きな原因の一つとして、今は認知されています。

歯周病を侮ることなかれ。

参考文献

月刊糖尿病 #118.Vol. 11 No. 4. 2019.「糖尿病専門医として知っておきたい歯周炎のこと」.医学出版